2013年4月26日金曜日

日本で必要とされているジェネラリスト(家庭医・総合医)とは? 

ある雑誌に、私の尊敬する医師の1人である、三重大学家庭医療学・総合診療科教授の竹村洋典先生の寄稿が乗っていました。
このタイトルの通りの題名で寄稿されていたもので、日本でのデータを調査した結果としてのコメントを寄せられていました。その中の一節がとても重要と思ったので、今回記録することにしました。

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・・・ところで、最近、「総合診療科」の文字が紙面をにぎわすようになってきた。海外ではその存在も珍しくないから、それも参考に、色々な議論がされているようである。でも、日本では、そのようなジェネラリストはどんな医師であると、日本の住民にとってよいのだろう。西洋人の言っていることだけでは心配になる私は、いろいろと調査してみた、ここ日本で。

  ~中略~

・・・最期に医療の患者中心性。まず重要なこと。
そもそも、患者は病気だから医師を訪れるのではない。患者は病気だと思い、医療機関にかかるほどの状態だと思ったから来院する。
例えば町の診療所や病院、および大学病院で風邪患者について調べてみた。そしたら、診療所・病院では、患者の9割以上は薬をほしくて来院していた。一方、風邪で大学病院を来院する患者(このような患者もいる!)は、6割以上が検査を目的としていた。そう、大学病院に来る風邪患者は、自分が風邪だなんて思っていない。
だからジェネラリストは、患者の病気の診断や治療のみならず、患者が何を考えて医師のもとに来たのか、思いをはせる必要もある。さらには、患者の思いもよらない世帯の同居家族の人数、世帯の自動車の所有、仕事の有無、年収、学歴、飲酒状況等の社会的な状況や、不安になりやすさなど心理的な状況も受療行動に優位に影響していることが、我々の調査で分かった。
そう、患者背景を考慮したケアも、ジェネラリストには重要である。
でも本当にこのような患者中心性が、患者を健康にしているのか?心配症の私は、3096人を対象に調べてみた。患者中心の医療を行うような医師からケアを受けていると、脂質代謝異常症や不眠症などの患者は、確かに有意に病気が良くなるようである。一方、高尿酸血症の患者はこのような医師にケアされると、病気が悪化するようである。ただし、それでもその患者らはその医師に満足していることもわかり、日本の患者が医療に何を求めているか、まず患者に接するジェネラリストはよくよく考える必要がある。

ああ、やっぱり調べておいてよかった。日本には、日本の地域住民に適したジェネラリストが、今後どんどん育ってほしい。

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家庭医が普段何を重要視して診療を行なっているのか。それは他の専門科の医師とどう違うのか。
家庭医療とは、「患者中心の医療」、「家族志向のケア」、「統合的なケア」、「行動変容」、「地域包括ケア」を行い、そしてACCCC(Accessibility:近接性、Continuity:継続性、Comprehensiveness:包括性、Coodination:協調性、Context:文脈性)を専門とします(各単語の意味は、後々ブログで説明していきたいと思います)。

ただ、これらを実際に分かりやすい言葉にしても、なかなか伝わりにくいことがあります。

その一つには、おそらく、自分で言いながらも、実際にそれが目の前にいる人々の利益につながっているのか、ひょっとしたら、自己満足になっているだけではないか、自分は勘違いしているのでは、と思うことがあったからです。
でも、今回の竹村先生の寄稿では、ちゃんと調査に基づいてそれを説明してくれていました。
家庭医療を実践している自分自身があらためて納得、そして安心できました。

もっと頑張ってやろう、と背中を押された気持ちになりました。明日からさらに頑張ります。

2013年4月25日木曜日

成人の 麻しん 風しん の予防接種について

とっても久しぶりの更新。

これからこまめに、追記します。


風疹の予防接種を受けに、外来へ来られる成人の方が多くなってきています。

予防接種を2回していない場合、成人になるにつれ風疹の抗体が低くなり、

自分のみならず、パートナーに感染させてしまう場合があるという情報が

一般によく知られるようになってきたのでしょう。



鎌倉市でも、予防接種を受けるにあたり、費用の助成が付く予定です。

このことは、大変素晴らしいことだと思います。


でも、まだまだ全員に届くまでは情報提供ができていないと感じています。

特に多忙な方ほどそうではないかと。

そう考えている時に、同じく家庭医をされている先生から紹介された記事を思い出したので紹介します。


http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/149856.html


2013年03月22日 (金)婚姻届出した人に風疹予防接種を


妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出るおそれのある風疹が、首都圏を中心に流行するなか、東京・中野区は、婚姻届を出した人たちに予防接種を受けるよう呼びかけるチラシを配る取り組みを始めました。
どんな良い情報でも、本当に必要な人に届かなければ、意味をなしません。

これは本当に良い発想だと感心しました。これなら、すぐにでも取り組めます。

何にでも、イノベーションが大事なのだと実感しました。

私も、外来に風邪で来られた方にも、少しだけお話させてもらおうと思います。


ちなみに、風疹単独の予防接種ではなく、

麻疹と風疹の混合の予防接種でも、特に問題ありません。

むしろ麻疹への抗体も強化されるので、より良いと思います。

現在、風疹単独の予防接種は数が少ないため、

受けられないと思ってしまう方もいるかもしれません。

せっかくのチャンスなので、是非とも予防接種を受けて下さい。