2015年4月5日日曜日

アレルギーの番組を見て

ほぼ1年ぶりの更新です。
色々書きたいこと、考えなけれなならないことがありながら、多忙さを理由に怠けていました。
新年度になり、あらためてスタートします。

なぜ今日から再開かというと、NHKの食物アレルギーの番組がとても良かったからです。

診療所で診察していて、食物アレルギーを持っている方には必ず出会います。
また、乳児健診の際に相談される質問のなかでも、かなり上位にランクインしています。
その時にいつも説明している内容が、本日の番組では本当に分かりやすく、映像で流れていました。

まとめると、
◯食物アレルギーの予防について(まだ食物アレルギーになっていない人へ)
-食物アレルギーは近年急激に数が上昇しており、遺伝というよりも環境の要因が強い
-食物アレルギー起こす免疫細胞がある一方で、アレルギーを抑えるTregという免疫細胞がある
-Tregを増やすためには、乳児期の離乳食にて色々食べている方がよい
-乳児湿疹などの肌荒れを起こしていると、そこから入った食べ物のカスや異物に対して、アレルギーの免疫が作られる。そのため、お肌のスキンケアは食物アレルギーのケアとしても重要
-ピーナッツアレルギーは、幼小児期のスキンケアにピーナッツオイルが使用されていたことが原因である可能性がある
-妊娠中・授乳中にお母さんがこどもの食物アレルギーを心配して避けることは、予防に効果が無い

◯食物アレルギーの治療について
-最近話題になっている舌下免疫療法は、摂取するアレルゲンの量が押さえられているため、効果発現に数年単位の時間がかかり、さらに改善する人も70%で、30%は効果が出にくい
-よりTregをふやすために品種改良された花粉緩和米が作られ、それを毎日摂取することで数ヶ月で改善を認められる例もある(商品化はおそらく5年後ぐらい)
-舌下免疫療法は杉だけでなく、今後ダニ(ハウスダストの原因)に対するものも保険が通る予定
-注射での免疫治療もあり、海外では猫アレルギーに対しても改善を認められている

など 覚えている範囲で書きました。
うーん50分ほどの番組で、これだけのことが一般の方に分かりやすく伝えられるとは・・・
本当にとても良い内容の番組だったのではないでしょうか。

私は、上記の内容もお話したうえで、
・パッチテストや血液検査はアレルギーの確実な判断の検査にはならず、あくまで予測する検査の一つであること(現在の医学ではTregがまだ簡単に測定できないため、仮に卵などの食べ物に対して血液検査で陽性となっても、実際には食べられる可能性があり、必要のない除去食やストレスを受けることになってしまう)
・なので、アレルギーが疑われた場合には、どのような食べ物で実際にでているかをメモしておいて、教えてもらい、状況をしっかり聞いた上で診断をし、場合によっては経口負荷試験を受けてもらう
・皮膚は、できるだけ綺麗にしたほうが良く、保湿は遠慮なくしっかり行うとバリアができること
・ステロイドはハサミや包丁と同じで、ちゃんとした使い方をすれば副作用を起こさずに肌を綺麗にできること(昔と違い、長年の研究の結果、現在は副作用を生じない塗り方がきちんとわかってきている)
・アレルギーとアトピーの悪循環を止めてあげられるのは早いほうが良く、逆にアレルギーを怖がらないで楽しく食事をしてもらいたいこと
・状況によっては、経口免疫療法がうけられる病院を紹介すること

などをお伝えしています。

今回の番組を見て、花粉緩和米の効果を知り、医学の進歩はすごいとあらためて感じました。
がんの治療についても後日記載しますが、近い未来、なおせない病気はなくなってしまうのではないかという勢いが、ここ数年の様々な報告で感じられます。
だからこそ、これからは”生きるとは何か”という根本的なことについて、真摯に向き合い、伝えていかなければならない時代に突入していると思います。

家庭医は老若男女を領域を問わず、診察室から診察室の外に飛び出してまで、その人とその家族へ関わっていきます。多方面の視野の広さを持つ、地域医療の専門科として、その点を伝えていければと思い、頑張っていきます。