2013年10月10日木曜日

鎌倉市長選 公開討論会に参加しました

昨日の10月9日、鎌倉市長選挙の公開討論会が生涯学習センターで行われました。

市民の皆さんから希望の多かった5項目について、候補者2人が今後鎌倉市をどのような方向に進ませていくのかその思いと方針について聞きました。

今回の項目から「福祉」と「教育」は漏れてしまっていたのですが、「まちづくり」「世界遺産登録」「財政」なども興味深く聞かせてもらいました。「医療」と「鎌倉で生活をしていくこと」、それぞれ、とても関係が深いことだからです。

家庭医の重要な概念の一つに「Bio-Psycho-Social Model」という概念があります。
これはその人のBiological(生物学的)な部分だけではなく、Psychological(その人の心)の部分やSocial(とりまく環境・社会)の部分も同等に問題があり、かつ、それぞれが関連しあっているという考えかたです。家庭医はこのことを踏まえて目の前の方だけでなく、その家族や地域性も考慮して考え、解決するアプローチを行っていきます。医療だけではなく、場合によっては福祉や教育、行政、近隣の方々やNPOなどとも協力をしていきます。

そのために、地域のことにはできるだけアンテナを張っておく必要があります。昨日の会では、聞きながらあらためて知り得たこともあり、また、どのような対策や方針を鎌倉市がとっていこうとするのかを聞くことができたのは、たいへん有意義なことでした。

色々なことを踏まえて、やはり行政が末端まですべてを行うのではなく、円滑かつ厳格なシステムを作り上げることに集中することが必要かと思いました。スマートフォンで言えば、スマホ本体が「市」で、アプリは「NPOなど市民が行動する内容」です。そのスマホが魅力的かどうかは、本体の機能やスムーズさもそうですが、同時に魅力的なアプリがあるかどうかも重要です。なので行政のことを考えつつ、同時に市民が活動して活性化をしていかなければならないと思います。

新しい「古都 鎌倉」 がどのようになるのか、それはみんなにかかっているのだなと当たり前なことを、あらためて実感しました。





2013年10月1日火曜日

認知症ネットワーク かまくら散歩

数週前の土曜日に、

「かまくら認知症ネットワーク」が定期的に行っている ”かまくら散歩”がありました。

私も午前の外来が終わってから参加しました。

色々な場所で行う企画なのですが、

認知症の当事者の方々と、サポーターが一緒に

鎌倉駅から由比ヶ浜海岸まで散歩をしました。

由比ヶ浜海岸ではみんなで海岸の清掃を行いました。

当日は晴天で海風が大変気持ちよかったです。


”かまくら散歩”の目的は、当事者の方が楽しい体験を行うのはもちろんですが、

実は「啓蒙」と「教育」という目的もあります。


散歩を行う前に、「認知症とは」「どのようにサポートすればよいか」の講義があり、

そのあとで散歩によりそうことを通して、実際に認知症の当事者のことを理解してもらいます。


また、一緒に散歩をするサポーターには ネットワークのメンバーのほかに、

鎌倉市内や近隣の市の中学生が参加しています。


サポーターには認知症という病気のこともそうですが、

それだけではなく、当事者がいったいどういう”ひと”なのか、

まだまだできることがあるということや、

その方々を通して社会のしくみや課題を考えたり、

自分が年を取っていくことは、決して恐れることではないことを 

それぞれが感じたり、考えてもらう機会としてもらいます。


大変有意義な活動だと思います。

この企画をセッティングしていただいているメンバーの皆さん、本当にありがとうございます。


もし機会があれば、是非、多くの方に参加してもらいたいと、思っています。



2013年9月28日土曜日

診療所がオープンしました

9月2日、診療所がオープンしました。

名前は かまくらファミリークリニック です。

http://kamafami.com/

場所は由比ヶ浜の六地蔵交差点から下馬に向かうバス通り沿いです。

標榜として 内科 小児科 としてありますが、

鎌倉の家庭医として、

病気の領域にかかわらず、

赤ちゃんからご高齢のかたまで、

外来やお家への訪問診療などその人の状態に応じて対応し、

そして禁煙外来や予防接種など個人の健康増進から、

サークルや学校など地域の皆さんへの健康教室を行わせていただき、

また私自身も地域の一員として、地域の活動にも積極的に参加しながら、

頑張っていきます。

出会う皆さんから、勉強させていただくことが多いと感じています。

どうか、よろしくお願いいたします。



2013年8月12日月曜日

1歳6ヶ月児 健診

先日、1歳6ヶ月児の健診を保健福祉センターで行って来ました。

色々なことをわかりはじめるのがこの頃で、言語、社会性、運動などの発達を評価するうえでの大事な時期なのです。

ここで見逃してしまうと、次回の集団検診は3歳になってしまいます。少し気になる場合は時間をかけて診ていくことが大事なので、3ヶ月後に診療所に来ていただくことをおすすめしています。

またトイレトレーニングなど、大きな意味での社会との接点を作りはじめていく時期ですが、
個人差が多いこともよくあるので、まずは焦らずに少しずつ見ていくことが大事ですとお伝えしています。

「こんにちは」と言うと、笑いながら「はい」と答えてくれる子もいますし、おかあさんにギュッとしがみつく子もいます。そのような姿やコミュニケーションをみて、その子その子の成長を嬉しく感じます。

















2013年8月10日土曜日

NPO法人「遊っ子楽っ子」の講演会 

8月9日、生涯学習センターにて講演会を行わせていただきました。

鎌倉の子育て支援NPO「遊っ子楽っ子」様が企画していただき、
「おかあさんができること~よくある子供の病気と事故について~」
というタイトルでお話をさせていただきました。

インフルエンザ、熱中症、虫さされ、頭を打った時・・・、まだ小さいお子さんをお持ちのおかあさんが、よく出会ったり疑問に思ったりする病気や事故のことについて、どんな時に病院に行ったら良いのか、家で様子をみる時に気をつけることなどについてお伝えしました。

鎌倉地域にお住まいのおかあさんたちに加えて、保健福祉センターの職員の方々も参加され、大変熱心に聞いていただきました。

途中で、消防署にお借りした人形を使い「窒息」の対応と「心肺蘇生」について実習を行いました。
「結構たいへん」という言葉も聞かれましたが、それだけ皆さんが本気でやられていたということですね。私としてはその感覚を覚えていただき、とにかく完璧で無くても良いから直ぐに心臓を押してもらうことの重要性を強調しました。

そして、最後に「おかあさんとおとうさんが 本当のこどものかかりつけ医であり、皆さんの感覚は正しいことが多く、自信を持って育児を楽しんでいって欲しいです」ということをお伝えして終わりにしました。

1時間30分の講演で、会場も熱気にあふれたなかで、みなさんが最期まで参加していただき、そればかりか、講演後にも質問をいくつかいただきました。本当に有難うございました。

また、講演の間、お子さんをお預かりしていただき、おかあさん達が集中できるような環境をつくっていただいた「遊っ子楽っ子」の皆さんに、本当に感謝します。
こうやって、こどもが健全に育つ環境を、世代を超えて作り繋いでいくのですね。本当に素晴らしいです。私もそれに参加する貴重な機会をいただけたこと、本当に感謝します。

これから地域で医療を提供していくにあたり、同じく地域でサポーターがいることに安心し、また私自身ももっと頑張らなければと良い刺激をいただきました。

2013年5月27日月曜日

認知症のワールドカフェ

昨日、私が理事をしている かまくら認知症ネットワークの総会がありました。
そのなかで、グループセッションをしたのですが、認知症をテーマにしたワールドカフェを行いました。
ワールドカフェは  対話が中心の ワークショップです。
誰かから一方向性に話題や内容を与えられるのではなく、お互いが意見・アイディアを教えあう双方向性のものです。エチケットは多少あるものの基本、自由に、リラックスして対話を進めます。

今回は「認知症になることを語ろう」というテーマで行いました。

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 もし、自分が認知症になった場合

  「自分が安心するとは、どういう感じでしょうか」
  「まわりが安心するとは、どういう感じでしょうか」
  「安心するために、今からなにをすればよいでしょうか」

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難しいテーマであったと思いますが、コーヒーやお茶をのみながらリラックスしていただき、
皆さんとても、熱心に参加され、大変盛り上がって会が進みました。

ワールドカフェは答えや方向性が決まっていないものを話し合うのに適している方法で、今回のテーマにとても合っていたと感じました。

最終的に答えはひとつではありませんし、ひょっとしたら答えはでないものかもしれません。
でも、私はこのようなことを考えるプロセス自体が、そして、それをひとりではなく、みんなで考えることが大切ではないかと実感しました。

私は進行役だったのですが、そのことをはじめとし、得られたものがたくさんありました。










2013年4月26日金曜日

日本で必要とされているジェネラリスト(家庭医・総合医)とは? 

ある雑誌に、私の尊敬する医師の1人である、三重大学家庭医療学・総合診療科教授の竹村洋典先生の寄稿が乗っていました。
このタイトルの通りの題名で寄稿されていたもので、日本でのデータを調査した結果としてのコメントを寄せられていました。その中の一節がとても重要と思ったので、今回記録することにしました。

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・・・ところで、最近、「総合診療科」の文字が紙面をにぎわすようになってきた。海外ではその存在も珍しくないから、それも参考に、色々な議論がされているようである。でも、日本では、そのようなジェネラリストはどんな医師であると、日本の住民にとってよいのだろう。西洋人の言っていることだけでは心配になる私は、いろいろと調査してみた、ここ日本で。

  ~中略~

・・・最期に医療の患者中心性。まず重要なこと。
そもそも、患者は病気だから医師を訪れるのではない。患者は病気だと思い、医療機関にかかるほどの状態だと思ったから来院する。
例えば町の診療所や病院、および大学病院で風邪患者について調べてみた。そしたら、診療所・病院では、患者の9割以上は薬をほしくて来院していた。一方、風邪で大学病院を来院する患者(このような患者もいる!)は、6割以上が検査を目的としていた。そう、大学病院に来る風邪患者は、自分が風邪だなんて思っていない。
だからジェネラリストは、患者の病気の診断や治療のみならず、患者が何を考えて医師のもとに来たのか、思いをはせる必要もある。さらには、患者の思いもよらない世帯の同居家族の人数、世帯の自動車の所有、仕事の有無、年収、学歴、飲酒状況等の社会的な状況や、不安になりやすさなど心理的な状況も受療行動に優位に影響していることが、我々の調査で分かった。
そう、患者背景を考慮したケアも、ジェネラリストには重要である。
でも本当にこのような患者中心性が、患者を健康にしているのか?心配症の私は、3096人を対象に調べてみた。患者中心の医療を行うような医師からケアを受けていると、脂質代謝異常症や不眠症などの患者は、確かに有意に病気が良くなるようである。一方、高尿酸血症の患者はこのような医師にケアされると、病気が悪化するようである。ただし、それでもその患者らはその医師に満足していることもわかり、日本の患者が医療に何を求めているか、まず患者に接するジェネラリストはよくよく考える必要がある。

ああ、やっぱり調べておいてよかった。日本には、日本の地域住民に適したジェネラリストが、今後どんどん育ってほしい。

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家庭医が普段何を重要視して診療を行なっているのか。それは他の専門科の医師とどう違うのか。
家庭医療とは、「患者中心の医療」、「家族志向のケア」、「統合的なケア」、「行動変容」、「地域包括ケア」を行い、そしてACCCC(Accessibility:近接性、Continuity:継続性、Comprehensiveness:包括性、Coodination:協調性、Context:文脈性)を専門とします(各単語の意味は、後々ブログで説明していきたいと思います)。

ただ、これらを実際に分かりやすい言葉にしても、なかなか伝わりにくいことがあります。

その一つには、おそらく、自分で言いながらも、実際にそれが目の前にいる人々の利益につながっているのか、ひょっとしたら、自己満足になっているだけではないか、自分は勘違いしているのでは、と思うことがあったからです。
でも、今回の竹村先生の寄稿では、ちゃんと調査に基づいてそれを説明してくれていました。
家庭医療を実践している自分自身があらためて納得、そして安心できました。

もっと頑張ってやろう、と背中を押された気持ちになりました。明日からさらに頑張ります。